吉川工務店

吉川工務店

完パケ対応の吉川工務店

吉川工務店代表の吉川さんの大工歴は、長い。実家で5年、工務店で社員大工を16年続けてきた。在職していた工務店では、リフォームから新築物件の建築、見積書作成にいたるまで、すべての工程を経験。全行程を取り仕切る監督も、長く担っている。

ひとつの会社ですべての工程を担当するケースは現在では少なく、工程ごとに外注することが多いため、一人ですべての工程を経験したことのある大工は、決して多くはないらしい。

吉川さんはまた、リフォームや新築物件と向き合いながら、棚やウッドデッキ、ウッドフェンスといった家具や内装作りにも力を注いできた。既製品を一切使わず、発注者のニーズにあわせた一点ものを、これまでにいくつも作りあげている。更地の状態から家を作り上げ、その内装にまで携わるなかで、吉川さんはものづくりの楽しさに気づき、顧客から喜ばれることに自分の喜びを重ねるようになった。

前述した「すべての工程」には、営業はもとより、プラン提案、図面作成も含まれる。吉川さんの伴侶である道子さんもまた、同じ工務店で働いていた人だ。道子さんは大工ではないが、工務店時代に培った経験をもとに、吉川工務店ではインテリア提案やデザイン提案を担当している。道子さんは、直接大工には話しにくいことや、台所周りのことなど、女性のほうが気づきやすいことにも、耳を澄ましていきたいと話していた。

話がそれるが、主に映像を取り扱う仕事の現場で使われる言葉に「完パケ」という言いまわしがある。これは、「完全パッケージ」を略したものだ。撮影した映像を編集し、音楽やナレーションを加え、一本の完成した作品にまとめられた状態の映像を意味する。

設計から大工まで一貫して受注ができ、男性の声にも女性の声にも応えられる吉川工務店は、まさに、大工の世界における完パケ対応ができる工務店だ。加えて、同じ人間がはじめから最後まで担当するため、できあいのパッケージにはない、一品物だけが持つ魅力を作り上げる力も、吉川工務店にはある。

「地元でやりたかった。地域密着でやっていきたい。迅速に対応したい」吉川さんは、そう話していた。

「こだわりを持った方のニーズに応えていきたいと思っています。人のために役に立てる仕事を続けていきたいです。あくまでも、いつまでも、お客さんの声を聞きながら、仕事を続けていきたいんです」

吉川工務店はまだ1年目の会社だが、培った経験は潤沢にある。吉川夫妻はこれからも、施主の声に耳を傾けながら、完パケを紡ぎ続けていく。