村越 航

東京塗装-レイバック-村雨

村越航さんは仮設足場会社を営む。彼には面白いバックボーンがある。
足場会社を経営し、足場職人としても活動しているが、実は元々、塗装の職人だった。

近頃は塗装工事と足場工事とが完全に分業化しているものの、少し前の時代は塗装工事の一環として、塗装会社や塗装の職人が足場を建てることも工事の習慣として行われていた。
しかし、労働災害防止などの観点から法令の厳格化に伴い「足場の組立て等作業主任者」の選任が必要となり、塗装工事店が自ら足場を組み立てることは近年では少なくなった。

また、足場資材の管理や安全性の確保などの観点と、リスクヘッジや専門性による効率化のメリットから塗装職人、足場職人、双方のスペシャリスト化が進み、首都圏では現在の完全分業へと姿が変わった。

村越さんの出身は京都。十代から塗装職人の丁稚として働き、塗装工事の段取りとして足場工事を行っていたものが、いつしか塗装と足場との作業割合が逆転し、今や仮設足場会社を経営するに至る。更に塗装の職人時代には、塗装工事の難関国家資格、一級塗装技能士(建築塗装作業)までもを取得していることから、本物のペンキ屋度合いがわかる。

よく塗装工事の現場では、塗装職人が作業中「この足場なんか変だな~」とか、「この足場作業しにくい」などという愚痴を溢す事がままある。塗装側の視点と足場工事との観点とが食い違い、塗装作業が難しくなってしまう。こうなると簡単な作業も足場が原因で難しくなり、小さな食い違いが安全にも影響する。

村越さんはこう語る「生命の尊さを最優先に」と。この”生命の尊さ”とは、足場の組み立てを行う自分達だけではなく、お客様としての塗装職人も、更には注文主の施主も、現場を通り過ぎる通行人など、「工事に関わる全ての人の安全を確保したい」との意思表示だ。

また現場では、事前に現場に入る職人達の身長を聞き、足場の組み立てを行うという。
「塗装しやすいように、足場を作るのは勿論ですが、最近の塗装工事ではマスキングテープを多用するので、テープが打ちやすいように足場の高さを調節しています。」と、流石、元塗装職人。
これは一見些細なことに思えるが、小さな積み重ねによって安全が生まれる。その逆として、小さなことを見過ごせば、事故が起こることも知っている。
作業しやすいことで効率が良くなる。無理な姿勢による落下や滑落が無くなる。

作業性と安全性とが「表裏一体」という、現場の真髄を知り抜いているからこその足場施工だ。

最後に村越さんはこう語る。「命の安売りはできない」。
これは工事価格のみを直接的に言っているのでは無く、小さな作業の省略や、一見些細に思えるような事柄を削ることで、関わる全ての人の安全に影響してしまう、という考え方のあらわれだ。

塗装職人が足場職人へとジョブチェンジし、足場が現場の安全を作ることを自身が一番理解しているからこそ、命を守る仕事へと真剣に向きあう。

村越さんは、足場が安全を作る、命を守るという明確なポリシーを持ち、日々塗装工事や防水工事、リフォーム工事の裏方として人知れず作業を続けている。
東京塗装はこの心意気に共感し、工事の安全を彼に託した。

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