桜井光貴

sakurai-1

桜井光貴さんは、塗装工事全般を営む「光建」の社長だ。長く塗装の世界で技術を磨き続け、およそ8年前にこの会社を興した。東京塗装にも当初から参画している。

以前にご紹介した、光建で働く三浦兄弟にお話を伺っていると、塗装の仕事に関心があったというよりも、桜井さんがいるがゆえに塗装業に従事していると感じられるほど、桜井さんへの心酔っぷりが伝わってきた。彼らがそれほどに尊敬する桜井社長は、どんな方なのだろう。

丁寧に、嘘をつかず、できる限りのことを、手を抜かずにやりながら、学ぶことも続ける。桜井さんの仕事に向けた姿勢は実直そのものだ。飾り気のない、シンプルな言葉を、桜井さんは淡々と重ねた。「我こそは……」「うちにしかできない……」といった物言いは、全くないが、その朴訥とした語り口の行間から、仕事への誇りが確かに感じられた。

「なるべく、お客さんにも自分の考えていることを話すようにしています。そうできるようにしています」と、桜井さんは語っていた。こちらが真意をはかりかねていると、すぐに、彼は言葉を続けた。

お客さんの要望を聞くことは、まず大前提である。いっぽう、「この場所にはこの色」「この色を使ったら、全体の仕上がりはこんな感じになる」と言った勘所が、桜井さん自身の中にも養われている。よって、お客さんの要望を聞きつつ、がっかりしてしまうような完成予想図が桜井さんの頭の中に描かれたときには、この色のほうがいいと提案することがあるとのことだった。

提案するためには、勘所を養い続けなければならず、また、お客さんとの信頼関係が築かれていなければ、せっかくの提案も相手には伝わらない。「そうできるようにしています」との言の真意は、「自身を磨きつつ、耳を澄ませ、お客さんの言葉に反応できる自分であるよう心がけている」という気持ちを込めてのことなのだろう。

桜井さんはまた、将来的には人を増やしたいとも話していたが、事業拡大への意気込みとは、少し、ニュアンスが違う。

「こいつと一緒に仕事がしたいって感じられる仲間を、もっと増やしていきたいんです。そういう仲間が増えていけば、自然と、それまでにできなかった新しい仕事ができたり、それまでで会うことのなかった新しいお客さんにめぐり会えたりするものだと、私は思っています。人が人を呼ぶような(そういう仕事をしていきたい)。」

「光建」という社名は、桜井さんの名前から一文字を充てたものだ。その後、三浦光太郎さんと三浦光さんが加わることで、光健は偶然にも、三つの光からなる会社となった。そして今後も、光が光を呼び続けながら、その輪を広げていくのだろう。

光建の倉庫には、三浦光さんが撮影した集合写真が3枚掲げられている。写真好きの光さんが、年に1度この写真を撮ることが恒例となっていると聞いた。人が人を呼ぶ光建の歴史は、この集合写真とともに、これからも紡がれていく。

sakurai-2

ajaxform