佐々木塗料

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東京塗装の顔立ちは、佐々木塗料から

佐々木正二さんは、佐々木塗料の二代目店主として数々の塗料と塗装用具を取り扱う傍らで、塗装に関する職能集団「東京塗装」の代表も務めている。

東京塗装は、決してそろばんを弾いてつくられた集団ではない。

 02年から、佐々木さんは佐々木塗料での仕事を始めた。1代目となる父は多くを語る人ではなかったと言うが、「地道にやっていれば飯は食える」「ハデな商売は長続きしない」との言葉を受け、少しずつ手の届くところから、仕事に携わっていった。黙っていてもある程度の塗料は売れたが、受けの姿勢に物足りなさを感じ、03年に自ら佐々木塗料のウェブサイトを開設。商品の撮影と説明の執筆をしてはウェブサイトに公開するという作業を、10年にわたって、コツコツと続けてきた。03年にウェブサイトで物販ができる仕組みを導入したが、ウェブサイトを介して初めて塗料が売れたのは、06年ごろのこと。その後も、爆発的に商売が大きくなるようなことはなかった。また、06年には1代目が亡くなっている。

この10年の間に、塗料の知識を蓄え、塗装業界についての見聞も深め、様々な分野における職人さんたちと言葉のやり取りを重ねながらも、「このまま続けていても、なんだかなあ」との想いが、佐々木さんの中で日に日に強くなっていった。塗料や塗装用具を購入する職人から聞く、「仕事の成り立ち方」に疑問を感じるようになったのだ。大手メーカーが仕事を受注し、施工業者が仕事を受けるといった仕事の入り方が圧倒的に増えたことから、職人の元に渡る手取りは少なくなるばかり。減ったのは、報酬だけではない。あくまでも窓口は受注した親会社のため、実際に手を動かす職人はお客さんに提案をすることもできない。「こうするといいですよ」との職人魂を発揮できる現場が、どんどんなくなっていった。

ひと口に塗料と言っても、用途に応じて様々な種類がある。この現場にはこの塗料が最適との想いを抱きながらも、それを提案できないもどかしさを、佐々木さんは職人さんたちと共有するようになった。

「技術も経験もあるのに、それを活かす現場がない」

「仕事があれば、全てがまわる。仕事がなければ、黙って上から降りてきた仕事をこなすしかない」「だから、仕事を自分で取っていくしかない」

佐々木塗料のウェブサイトを立ち上げてからの10年は、そんなことを考え続けた10年でもあった。悶々とした想いを抱きつつも、腐ることなく、塗料業界誌や様々な文献に目を通し、塗料にまつわる勉強会やイベントに足を運びながら、自分に何ができるかを、考え続けていた。なんだかなあと感じながらも、塗料ひとつ一つについての見解や、業界の動向などを、丁寧に詳細に、ネットに発信し続けていた。

東京塗装のもう一人の立て役者である津田征治さんに初めてコンタクトをしたのは、01年ごろにまでさかのぼる。

佐々木さんは当初、ウェブサイトで塗料のカラーシミュレーションをする仕組みができないかを、津田さんに持ちかけた。以来、津田さんは、佐々木塗料及び東京塗装のウェブサイトやシステムの構築を担っている。佐々木さんが津田さんと初めて出会ったのは、初めてコンタクトを取った時から数えて6年も経った頃だ。二人は秋葉原の焼肉屋で顔を合わせ、その場で意気投合。以後、二人三脚で東京塗装のコンセプトを前に進めてきた。

津田さんによる尽力の甲斐から、佐々木塗料はネット上に様々なかたちで「登場」する頻度は高くなった。次は、売っていくことを考えなければいけない。しかし、佐々木塗料は個人商店。大手のように数をさばくことは難しい。前述の、「仕事を取っていくしかない」から「仕事を生み出していくしかない」へと、想いは自然と発展していった。

佐々木さんと話をしていると職人あっての塗料屋だとの想いが強く伝わって来る。

佐々木さんは様々な声を多くの職人から日々耳にしていた。そんな相談事なかには、職人自身のホームページを作って欲しいという声も、少なくなかった。

一人親方だったり、従業員数名だったりと、規模は小さくとも、職人さんの会社の顔となるホームページは、あったほうがいい。看板があれば、仕事が入ってくるチャンスは増える。しかし、小さな看板を作っても、幾千もあるネットの世界での看板に、埋もれてしまう。ならば、自身が携わってきた、信頼のできる職人の看板を集めた場所を作りたい。そこに改めて新たな意味付けもしたい。自分たちで仕事を生み出せるような集団を作りたい。東京塗装のコンセプトは、こうして生まれた。知識を蓄え、業界を鳥瞰し、職人の声に耳を傾けてきた佐々木さんだからこそたどり着いたコンセプトだ。

その後、少しずつ準備を進め、東京塗装のウェブサイトが完成したのは、15年のこと。今も試行錯誤を続けている真最中だ。東京塗装として仕事を直接受注するだけでなく、「現場で使い切れずにあまった塗料の販売」「お客さんと職人さんの橋渡し」など、多くのアイデアを溢れんばかりに抱えている。しかし、東京塗装の規模をむやみに大きくすることは考えていない。単なる規模の拡張をしてしまえば、お客さんの想いと職人の想いが乖離してしまうことを、佐々木さんは知っているからだ。信頼のできる塗料と道具と、信頼のおける職人たちとともに、信頼される仕事をお客さんに提案・提供すべく、今も次の一手を考えている。

負けん気が強いのに、人を悪く言うようなことは決してしない。いつもあっけらかんと、明朗快活。佐々木さんは、そんな人だ。そして、相手を図る物差しは、「心意気」一択。塗料販売店主と言えど、佐々木さん自身も、まさに職人そのものだと、筆者は思う。

佐々木さんと会った帰り道は、なぜか爽やかな気持ちになる。

東京塗装に仕事を頼んだお客さんも、東京塗装とともに仕事をする職人さんたちも、きっと爽やかな気持ちになることを、筆者は信じてやまない。爽やかな気持ちの先には、いい感じに仕上がった仕事が、きっとあるはずだ。

公式サイト:佐々木塗料