奈良部広嗣
奈良部広嗣(ひろつぐ)さんは、塗装屋生まれ、生粋の塗装ネイティブだ。
18歳から塗装職人の父に習い、建築塗装の世界に入るのは必然だった。
その後、大規模メインの防水会社で腕を磨き、防水工事の技術を引っさげ今一度、住宅塗装の世界に戻って来た。
現在は塗装はもとより防水工事もパーフェクトに行える多能工として戸建メインの改修を行っている。
昨今、戸建塗装であってもALC造やRC造の住宅が多くなり、塗装工事では本格的な防水に関して、防水職人とタッグを組んで工事を行っている。
塗装、改修工事での防水職人の役割とは、外壁の目地やサッシ回りのコーキングからはじまり、コンクリートの爆裂補修、タイルの張替え、集合住宅などの廊下、長尺シートの張替えなどがある。
更にはメインの屋上やバルコニーの防水に至っては様々な工法や施工技法が必要となり、一人で行えない工事のため、チームや班としての動きを統率するリーダーシップも必要だ。しかし奈良部さんは塗装職人でありながら、これらをフルカバーしている珍しい存在。
そんな彼は塗装と防水の経験を活かし、マルチ職人として活躍。現在では自身が親方となり、父親に職人として現場へ入ってもらうなど、以前とは立場が逆転し現場を仕切っている。
しかも嬉しいことに、彼自身の息子も職人見習いとして塗装の世界に入ったばかり。
「オヤジは俺のときは何も教えてくれなかったのに、孫へは懇切丁寧に仕事を教えてて・・・流石溺愛する孫へは態度が違う。」と、少し嫉妬まじりでありながら嬉しそう。
親子3代、阿吽の呼吸で仕事が進んでいく様は想像に難しくない。
彼のこだわりは「誰も損をしない仕事」と、率直にストレート。
一般的に塗装屋は「手を抜く」という、あまり良くないイメージが先行している。しかし殆どの職人達は「手を抜くって何?」、「仕様どおりの施工だよ」、「永く持つ工事をしたいよね」と、そもそも手を抜くという概念すら無い。なぜなら、職人達は日夜、猛暑の中で埃にまみれ、足震える高所で塗料の飛沫を浴び、精神体力共に極限の作業をしているからだ。そこで手を抜いたら自分の負けであり、どれだけきつくても真摯に仕事へ、自身の作業へと向き合えるかが価値なのである。
つまり、職に対してのアイデンティティを崩す「手抜き工事」は逆に敵と思っている。
しかし、その半面、外壁塗装の塗装会社は宣伝や広告で「手抜き工事云々」とか「うらばなし教えます」のような、ネガティブキャンペーンを打っている。
職人達にはそういった概念や素養が無いのに、広告を打つ側はおかしな手法を使う。なぜならば、そういった騙し広告を行う側が、自分達の関わっている工事が手抜き工事と自覚しているのだ。だからこそ、そういったキャッチコピーが出てくる。
こういった業者へのアンチテーゼが「誰も損をしない」と、いう事ではないだろうか。お客さま、塗装会社、職人・・・
しかし「誰も損をしない」と、いうことと「手を抜かない」とはイコールではない。そもそも手を抜かないのは職人の大前提で前出のとおりだ。そこから更に上を行き、率直に「誰も損をしない」と言い切る仕事が上辺だけではない証。WinWinのようなしゃら臭い言葉や、手抜き工事をしない、などという職人として当たり前の更に上を行く心構えだ。
自身の生い立ち、家族の歴史に仕事が繋がることを知っているからこそ、その言葉の意味は重い。
そんな彼と東京塗装は一言二言で理解できる間柄。目指す場所が同じなら、繋がるのは必然だった。